自分の味覚傾向を簡単チェック：得意な味、苦手な味を知る第一歩
自分の味覚、周りの人とどう違う？味覚傾向を知る意義
料理を始めたばかりの頃、「この料理、なんだか思っていた味と違うな」と感じたり、「周りの人は美味しいって言うけど、自分にはピンとこないな」と感じたりすることはありませんか。自分の味覚に自信が持てず、味の違いをうまく言葉で表現できないことに悩んでいる方もいらっしゃるかもしれません。
味覚は、人それぞれ個性があります。遺伝的な要因やこれまでの食経験によって、特定の味（甘味、塩味、酸味、苦味、うま味）への感度や感じ方には違いが生まれます。この個性のことを「味覚傾向」と呼びます。
自分の味覚傾向を知ることは、味覚を磨くための第一歩として非常に有効です。自分がどんな味を得意とし、どんな味を苦手とするのかが分かれば、より効率的にトレーニングを進められます。例えば、塩味に少し鈍感な傾向があると分かれば、意図的に塩味を意識する練習に時間をかけられます。逆に、酸味に敏感であれば、酸味の中に潜む他の要素（甘味や香りなど）を感じ取る練習に挑戦できます。
このコラムでは、身近な食品を使った簡単なチェック方法を通して、あなたの味覚傾向を知るためのヒントをご紹介します。
味覚傾向をチェックするための簡単な方法
特別な準備は必要ありません。いつもの食事や飲み物を味わう際に、少し意識を向けることから始められます。ここでは、五味（甘味、塩味、酸味、苦味、うま味）に焦点を当てた簡単なチェック方法を提案します。
1. 五味を意識して味わう習慣をつける
まずは、普段口にするものに含まれる五味を意識してみましょう。
- 甘味: 果物、砂糖を使ったお菓子、ジュースなど。「これはどのくらいの甘さか」「他の甘いものと比べてどうか」と考えてみます。
- 塩味: 味噌汁、漬物、スナック菓子など。「塩加減は適切か」「少し塩辛いか、物足りないか」を感じ取ります。
- 酸味: ヨーグルト、柑橘系の果物、お酢を使った料理など。「酸味は強いか、穏やかか」「心地よい酸味か、刺激的な酸味か」を感じます。
- 苦味: コーヒー、お茶（特に緑茶）、チョコレート（カカオ含有量が高いもの）など。「苦味は強いか、まろやかか」「どんな種類の苦味か」を観察します。
- うま味: だし（昆布、かつお節）、きのこ、トマト、チーズなど。「どんなうま味を感じるか」「他の食材と組み合わせるとどう変化するか」を意識します。
それぞれの味を意識して味わうことで、「自分は甘味を強く感じるタイプかもしれない」「苦味はあまり得意ではないな」といった気づきが得られます。
2. 複数の同種食品を比較する
同じ種類の食品でも、製造元や種類が違うと味が異なります。これを比較することで、自分が特定の味にどれだけ敏感か、あるいは鈍感かを知る手がかりが得られます。
- 例：牛乳の比較 数種類のメーカーの牛乳を少量ずつ飲み比べてみてください。甘さ、コク、後味などに違いを感じられるでしょうか。特定のメーカーの牛乳の甘さだけを強く感じる、といった場合は、甘味への感度が高い可能性があります。
- 例：プレーンヨーグルトの比較 数種類のプレーンヨーグルトを食べ比べてみてください。酸味の強さ、甘さ、クリーミーさなどに違いがあります。特定のヨーグルトの酸味を非常に強く感じる場合、酸味への感度が高いかもしれません。
- 例：コーヒーの比較 インスタントコーヒーでもドリップコーヒーでも構いません。数種類のコーヒーをブラックで飲み比べてみてください。苦味の種類や強さ、酸味、香りなどに違いが見られます。特定のコーヒーの苦味だけが際立って感じられる場合、苦味への感度が高い可能性があります。
こうした比較を繰り返すことで、自分が特に強く感じやすい味や、逆に違いが分かりにくい味が見えてくることがあります。
3. 好き嫌いから味覚傾向を推測する
自分の好き嫌いも、味覚傾向を知るためのヒントになります。ただし、好き嫌いには味覚だけでなく、過去の経験や習慣なども大きく影響するため、あくまで参考として捉えてください。
- 甘いものが特別に好き → 甘味に対して少し鈍感、あるいは逆に甘味の微細な違いを感じ取るのが得意、という両方の可能性があります。
- 苦いものが苦手 → 苦味に対して敏感な可能性があります。
- 酸っぱいものが苦手 → 酸味に対して敏感な可能性があります。
- 出汁をよく飲むのが好き → うま味を強く感じ取るのが得意な可能性があります。
単純な好き嫌いだけでなく、「なぜそれが好きなのか」「なぜそれが苦手なのか」を分解して考えてみると、味覚傾向が見えてくることがあります。「甘いだけでなく、後味のすっきりした甘さが好き」といった具体的な分析を試みてください。
チェック結果から分かること、そして次の一歩
これらの簡単なチェックを通して、「自分は特に塩味に敏感かもしれない」「苦味の違いがよく分からないな」「酸味は得意みたいだ」といった、漠然とした味覚傾向が見えてくるかもしれません。
大切なのは、「鈍感だからダメだ」と落ち込むことではありません。味覚傾向は、あなたの味覚の「現在の状態」を示すものであり、決して固定されたものではありません。味覚は鍛えることで変化し、磨かれていきます。
自分の得意な味を知ることは、味覚トレーニングのモチベーションに繋がります。得意な味から入ることで、味の違いを感じ取る楽しさを実感しやすいでしょう。 一方、苦手な味や、違いが分かりにくい味があることに気づいたら、そこを意識的にトレーニングするターゲットにできます。例えば、「苦味の違いがよく分からない」と感じたら、様々な種類のコーヒーやカカオ含有量の違うチョコレートを意識的に味わってみる、といった練習を始めてみましょう。
まとめ：自分の味覚と向き合うことから始めよう
自分の味覚傾向を知ることは、味覚トレーニングという旅の最初の道しるべとなるでしょう。あなたはどんな味を得意とし、どんな味に磨きしろがあるのか。それを理解することで、味覚トレーニングの計画を立てやすくなり、より効果的に味覚を研ぎ澄ますことができます。
今回ご紹介した方法は、あくまで簡単なチェックです。ぜひ、日々の食事の中で五味を意識すること、そして身近な食品の「味の違い」に注意を払うことから始めてみてください。自分の味覚と丁寧に向き合う時間を持つことが、料理の味を論理的かつ感覚的に判断できるようになるための確実な一歩となるはずです。
味覚は、あなたの食の世界を豊かに広げてくれる素晴らしい感覚です。焦らず、楽しみながら、自分の味覚を磨いていきましょう。